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老舗「おでん三吉」二代目に聞く。 定禅寺通エリアの昔と今とこれから。

小さい頃は定禅寺通に馬車だって走ってたんだ。狭い道でね。
仙台空襲から75年。戦後、未来の仙台を考えながら先人たちが道を広くして小さなケヤキの苗木を植えてね。大きく育ったケヤキ並木は、四季折々に表情を変えて楽しませてくれて、人が集う定禅寺通になったんだ。すごいことだよね。先人たちには感謝しかないよ。

-創業70年「おでん三吉」二代目店主 談


 

仙台市民のひとりとして、せんだいタウン情報machico編集部が今回お話をお聞きしたのは、仙台の老舗おでん・和食専門店 「おでん三吉」二代目店主 田村忠嗣さん。
生まれも育ちも稲荷小路、定禅寺通エリアの歴史の変遷を知る田村さんは、「定禅寺通活性化検討会」の会長を担っています。
みなさんにとって、定禅寺通エリアはどんな場所ですか?どんな変化があるといいですか?みなさんが「こうなったらいいな」と思う定禅寺通エリアをイメージしながら、ご一読いただければと思います。

 

みちのくのシャンゼリゼ通りを目指して。

仙台のメインストリートと言えば、青葉通・広瀬通・定禅寺通ではないでしょうか。
どの通りにもいろんな顔がありますが、宮城のシンボル的な顔となっているのは、定禅寺通のケヤキ並木。今年2020年も12月18日から「SENDAI 光のページェント」がはじまり、人が集うことでしょう。
専門家や有識者、企業も交えて意見しあう「定禅寺通活性化検討会」。
仙台都心エリアの全体のにぎわい創出の必要性が高まっている今、定禅寺通活性化の取組みを通して、あらためて定禅寺通エリアの「ブランド(価値や仙台都心でのポジショニング)」を考える機会が訪れています。
定禅寺通エリアのブランディングについて田村さんにお聞きしました。
「定禅寺通は私たちの宝物。先人の方たちが考えて行った結果が、 今、県外の方からも評価をもらっているのだから、私たちは甘えることなく先人の方たちへの苦労に報いるためにも、みんなでより楽しんでいけるような定禅寺通にしていきたい。」
「定禅寺通を“みちのくのシャンゼリゼ通り” にできたらいいね。ネーミングってすごく大事。緑道がある通りは貴重だし、定禅寺通 の特徴的な景観。若者も足を運びたくなるようなお店が増えることやエリアづくりが必要だね。俺はおでんのプロだけど、アイディアはたくさんの方に相談しながら、しっかり実現していきたいね」

 

回遊できるエリアへ。将来的には西公園よりももっと先まで。

定禅寺通エリアの課題は、「シンボル化されているが、目的地にはなっていない」という事実。
来年は、「大規模社会実験」も予定されていて、エリアブランディングの実施へ向けてのテストマーケティングや基本構想策定のために大切な期間になります。
県外の方からは、「仙台・青葉まつり、SENDAI光のページェント、定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、ケヤキ並木もあり交流できるスペースもある通りがあるのはすごい」「ゴミがなく美しい」など評価を得ています。今のままでも十分なエリアなのかもしれませんが、みんながひとつになってブランディングができれば、どんどん成長できるポテンシャルのあるエリアでもあります。私たちも街を歩き、定禅寺通エリアへ積極的に足を運んで一緒に考えていきたいですね。
田村さんは、「2001年に開館したせんだいメディアテークができてから、人の流れが大きく変わった。過去には、パチンコ店、キャバレー、演芸場があった時代もあったんだよ」と話します。建築家・伊東豊雄さんの設計による「せんだいメディアテーク」は、文化という色を定禅寺通エリアにもたらしました。
一番大切なのは『回遊』と話す田村さん。「定禅寺通を散歩しながら西公園も楽しめたり、さらに青葉山までジョギングするなんて言うのも良し。自然を満喫しながらゆっくりできるという特徴を持つ定禅寺通は回遊に適してるね」
以前、県内外の方にもっと定禅寺通にマッチしたお店が増えた方がいいのはというアドバイスをもらったことがあるそう。「裏道にも隠れ家的ないい店があるので、定禅寺通 にもそんなおしゃれなカフェや人が集まる店が増えれば、もっと若い人も来てくれるはず。メイン通りのブランディングがきちんとできれば、裏定禅寺通 のような若者文化ができて、回遊が生まれるはず。定禅寺通エリアのことは、定禅寺通活性化検討会の関係者だけが決めるものではない。年齢問わずたくさんの人の声を聞きたいね」そう話されていました。

 

賑わいをつくりたいという想いは、みんな一緒。

「定禅寺通活性化検討会の会長をしてるけど、「こうすべき。」なんて言っちゃいけないと思うんだ。ここにはお店をもって商売をしている人だけじゃなくて、住人だってたくさんいる。街の歴史を作ってくれた長く住んでいる人の声も大切にしたい。
みんなが意見できる場所を作るのが会長の仕事なんだよ。みんなの声を反映して、興味を持ってもらわないといけない。いろんな意見があると思う。ただ、アクションを起こさないと何も生まれないと思うんだ。」と田村さんは話します。

国分町地区安全安心街づくり推進の活動もされている田村さん。夜間のごみ拾いパトロールもされているそう。「その姿を見てみんなが意識してくれればいいんだ」とも話されていました。
「活性化」と一言にいっても、業種や立場によって視点はそれぞれ違うもの。ただ、ここを拠点にしている人たちは、元気で賑わいのあるエリアであってほしいという想いは同じはず。
田村さんの「受け入れる、聞く、姿勢を見せる」その佇まいは、創業から70年間、人が集う「おでん三吉」というお店を感じるものでした。
「定禅寺通活性化」には、変わるべきものと変わってはいけないものがありました。歴史ある定禅寺通エリアで変わってはいけないのは、このケヤキ並木を保全しこのエリアを守り続けてきた人たちの心意気なのかもしれません。